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2013年5月12日 (日)

ママ争奪戦

penママ争奪戦

by 理沙

久々の番外編です。

実のところ、母の日をすっかり忘れており、5月11日のオフ会で皆さんに知らされてから、その夜に書き始めた何といい加減な、のSSです。(笑)

なのでギリギリになってしまいましたが、「母の日SS」としてアップします。

それではどぞ~heart04

(;´▽`A``sweat01

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「―――ねぇ、エトパ~。」

ホワイト・ローズ・キャッスルの玄関口前にある、イギリス式の広大な白薔薇の庭園で、女王である未沙から、庭仕事を任されているゼントラーディ人の1人エトパが、梯子の上で庭園の手入れをしていると、下の方から自分の名を呼ぶ者がいた。

「んっ?」

エトパが気が付いて梯子の下を見ると、そこに女王の娘・未来がいるではないか。

「おや、未来ちゃんじゃないの。」

「こんにちは~。」

現在7歳児の未来は、学校からの帰りなのか、近衛学園小等部の真新しいランドセルを背負い、その大きなクリクリとした目でエトパを見た。

「ねぇ、そうだんがあるんだけど。」

「ん、なんだい?」

「あのね、みく今日、カーネーションが欲しいの。エトパ、持ってない?」

「カーネーション?…あ~、今日はそう言えば『母の日』だったねぇ。」

「あのね、あのね。みくまだお金持ってないんだけど、これで買えるかなぁ?」

未来はそう言いながらスカートのポケットをまさぐり、1つ1つ梱包されているクッキーを2つ彼の前に差し出していた。

まだ7歳児では、流石にちゃんとしたお小遣いを持たされていないのだ。

「アハハ…。そうだなぁ。裏庭のハウスに戻れば、城の飾り用に植えている花が少しあるよ。」

「これで1本未来にちょうだい、エトパ。」

本来なら1本位などはあげてもかまわないのだが、母に教えられて、花は国の人達の為にエトパ達が一生懸命育てている事をちゃんと理解しているらしく、未来はお金をあげなくちゃお庭のお花はもらえないのだと考えたのだ。

その気持ちだけで充分嬉しいエトパは、梯子から降りて、未来のまえでしゃがんで頭に掌を置いて撫でた。

「お駄賃をありがとう、未来ちゃん。じゃあちょっと裏庭においで。不思議な色の特別なお花をあげるよ。」

「ホント!?」

「今作ってみてるんだ。」

未来の気持ちをわかってくれた彼に、未来はパアッと明るい表情になって、裏庭のビニールハウスへ向かうエトパの後を追いかけて行くのだった。

それから30分位した後。

「――な~、エトパ~。」

未来に例の花を与えて再び梯子の上に戻り、作業をしていたエトパは、再びその名を呼ばれ、梯子の下に振り向いていた。

今度は何と、リカルド・ディゴス・Jが、やはり同じくランドセルを背負ったまま、首の後ろに両腕を回してエトパを下から見ているではないか。

その手には何故か、小さな黄色いバケツを持っていた。

「…ん、今度はリカルドくんかい?」

「あのさ、オレ今日カーネーションが欲しいんだけど、エトパ持ってない?これで1本買いたいんだけど、出来るかなぁ?」

リカルドが黄色いバケツを差し出したので、エトパは「?」と思い、梯子を降りてそのバケツを確認している。

中には沢山のミミズが入っていた。

ミミズは土壌を奇麗にする為、庭仕事や畑仕事の土を作る為には、非常に重宝する生き物なのである。

エトパ達庭師は、土を育てる為に堆肥を沢山作っていて、そこに放しておくととてもよかったりするのだ。

見ればリカルドの両手が、結構土で汚れていた。

おそらく学校から帰る道すがら、やはり小遣いをまだもらっていない彼は、あちこちを掘って見つけてはバケツに入れて来たのだろう。

エトパは思わずクスリ、と笑い、ふと何て律儀な子供達だろうと思った。

これもおそらく、2人を育てている女王の愛情の賜物なのだろう。

こんな風にお願いされては、あげないなんて言えるわけがない。

「…ふふ、君達は本当に気が合うんだねぇ。」

「?」

先に未来が来た事を知らないリカルドは、その言葉に小首を傾げる。

「うん、勿論あるよ~。このミミズで充分だから一緒に取って来ようか。今なら特別に奇麗な色のカーネーションをあげれるよ。」

「ホントか!?」

その途端、リカルドもパァッと表情を明るくして、梯子から降りて先を歩いて行くエトパを追うのだった。

女王の執務室の両側から、キョロキョロと周りを警戒しながら扉に近付く、小さなお尻が2つある。

普段両者は、女王の執務室には滅多な事で近付いてはいけないと言い聞かされている為、女王の隣部屋にいる秘書官達に見つからない様に、こそこそ物陰に隠れながら近付いていたのだ。

2人共、互いに相手がいる事にも気付かず、観葉植物や置物の陰に隠れてキョロキョロとしながら、執務室の扉へと後ろ向きに近付いている。

やがて互いの小さなお尻が、執務室扉の中央でコツン、とぶつかった。

「――あっ!」

「――わっ!?」

勢いの余り、ぶつかった途端に2人は前に押されて倒れてしまう。

「…!な、なんだ、ひめじゃんか。」

「ろ、ろなるど…?なんで?」

ああ、秘書官達じゃなくて良かったと胸を撫で下ろしつつ、両者は互いを咎める。

「な、何でこんな所にいんだよ、ひめ。」

「ろなるどだって、なんでここにいるのよぅ。」

そこまで言って、2人は互いの右手に握られている、大きな1輪の花を見ていた。

未来は、赤くて花びらの先端が少々紫に変わっているカーネーション。

リカルドは、花びらの先端がブルーに染まっている白いカーネーションをその手に持っている。

「…!」

2人はその瞬間、相手が何を考えているのか理解したらしい。

突然、ほぼ同時に執務室の扉に手をかけたかと思うと、同時に開けていた。

「――ママ!」

「――マム!?」

我先にと執務室に入り込んだはいいのだが、沢山の本や資料が立ち並ぶ執務室の中には、何故か誰もいなかった。

「あれぇ?」

「ママぁ?」

2人は同時にそう言って、ガッカリしていたが、リカルドが扉を閉めた途端、再び同時にその部屋の中心にある執務机に向かっている。

「――未来が先にママにあげるんだからね!」

「――オレが先なんだもんね~!」

「ずるいよ、ろなるどォ!未来のママなんだよ?」

「オレのマムでもあるんだも――んだ!独り占めすんなよ!」

「んもーっ、キライキライ、ろなるどのバカァ!みくが先なの!!」

「あっ、殴るなよォ!」

そんな事を言いながら、2人は我先にと相手を牽制して服を引っ張り、抑え込もうと躍起になる。

ところがそこで、秘書官達がいる扉の向こうから、大人の話し声が近付いて来た。

「!!」

2人は驚いて、慌てて机の上にそれぞれ持っていたカーネーションを置くと、コーヒーサーバーなどが置いてある簡易キッチンの奥へと隠れている。

お互いに口元を両手で押えて様子を伺った。

「…クスクス…それでね、こんなに沢山届けられていたんですって。」

そこに入って来たのは、隣の部屋へ花の束を取りに行っていたらしい、女王の未沙と夫の一条隊長だった。

「ハハ、でも凄い数だよなぁ。今や君は、この国の人々にとってお母さんだというわけだ。各施設の子供達だけではなく、一般の皆がそう思ってくれているなんて、有難い事じゃないか。」

「ええ。でもこんなに沢山あると、一体何処に飾ったらいいと思う――あら?」

1本1本梱包されている赤いカーネーションの束を、おそらく夫婦で100本は抱えている彼らは、ふと執務室の卓上に置かれている不思議な色をしたカーネーションを見止めていた。

「…まぁ、何て奇麗な色のカーネーション。赤に紫…しかもどちらも大輪で凄く奇麗ね。」

「こっちのは花びらの先がブルーになっているな。」

2人はそう呟いた後、互いに顔を見合せてクスリ、と笑っている。

誰がここにこれらを置いて行ったのか想像出来るからだ。

「きっとエトパね。この作り方教えたの。」

「ん?」

輝がキョトン、とする。

「知ってる?これね、白花なら青いインクを入れた水に暫く浸すと、花びらの先だけこういう風に出来るのよ。赤の方も同じインクだと思うけれど、赤に青を入れると紫になるでしょ?」

「…ああ、そっかぁ。花が水を吸う原理を利用しているのか。」

「フフ、そう。エトパったらきっと『特別なカーネーションだ。』なんて言って、2人にくれたのね。」

「――…。」

未沙が子供達2人からのプレゼントに、嬉しそうに優しく微笑んでいる。

輝もそんな彼女を見つめて、顔を優しげに綻ばせた。

その2つの花を取ってしげしげと眺めながら微笑んでいるのを見て、未沙が自分達の「母の日」のプレゼントに満足していると感じ、2人は簡易キッチンの中で互いの顔を見合せてにんまりとした。

だがそこで輝が何を突然思ったのか、カーネーションの花束を抱えたまま、暫し天井を向いて考えていた。

「…そっか。じゃあ、白い薔薇にも赤を吸わせれば…きっと先がピンク色に染まるんだよな。」

「えっ?」

未沙がそんな事をポツリ呟いた輝を見たかと思うと、次には未沙の唇が俄かに塞がれていた。

『――わわっ…!?』

未来とリカルドは、突然の輝の行動に、思わずびっくりして両手で目を塞いだが、両者とも指と指の間からしっかりと見ていたりする。

その無言の時間は、覗いている子供達にはかなり長い時間だったのだが、やがてそっと輝が未沙の唇を離していた。

目を見開いて驚いたままの未沙の白き両頬は、熱を帯びてピンク色に染まっている。

「…ほら、ピンク色に染まった。」

「ま…っ、ん、も、もう。輝ったら――…。」

そう突然の行為に小さく文句を言う未沙だったが、完全なる拒否ではないことがわかる。

その合図に夫婦だけが知っている意味を感じたらしく、恥ずかしそうに潤んだ瞳を逸らせた。

「…駄目?」

「だって…。」

「暫くしてない。」

「暫くって…1週間しか空いてないじゃないの。」

輝がその困惑の表情を見て、嬉しそうにニッコリとする。

「聞けなきゃもっと赤い薔薇にする。」

「…あっ、駄目よ、も、もう、こんな所で…!」

そんな事を言いつつ、未沙も完全に拒否は出来ていない。

その力強い腕に抱き竦められて、沢山の赤の花束を床に落としながら、未沙は結局なすがままになってしまうのだった。

「――あ~あ。や、やっぱりたいちょうには、かなわねぇよな~。ちぇっ。」

「うん。…だ、だってパパはおうじさまなんだもんね~。」

母の愛をそれぞれ独り占めしたくても、やっぱり彼には叶わないと2人は思う。

ここから出たくても、出るに出られなくなってしまった未来とリカルドは、何だか照れ臭くてもじもじとするしかなかったのだが、ふと一瞬互いの目が合って、慌てて真っ赤になって目を逸らせるしかないのだった。

おわり。

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コメント

仲良きことは、良きことかな♪おちび達
エトパ クッキー食べながら ミミズを餌に
魚釣りして、城の魚増やし計画しそう?

一条夫婦は、・・・・・(野暮レス止めとこ)
5/13日の二人に目が集まりそう(軍部と政府部)

バボも そろそ隠居生活をなんとかせねば!
カーネーションで、ついつい某連続ドラマの
お針子番組を連想しちゃった(爆)
一条夫婦ってば、ゼンちゃんS'の両親的存在だから父の日は、未沙の笑い声が響きそう

投稿: 敦賀屋 バボ | 2013年5月13日 (月) 03時41分

sun敦賀屋バボさま。
早速のご感想を、有難うございます。(笑)
先日のオフ会で、久々に皆さんのオタッキ―なぱぅわぁを沢山頂きまして、凄―い、最速の3時間で出来ちゃったwな代物ですよw
(やれば出来るじゃん、私!(笑))
やっぱり、普段と違う刺激って良いですね~!
作品作り…もとい、若さ?(笑)の為にはとても大事です。
( ^ω^ )人heart01
父の日…。
そうだった。それも来るんでしたね…。orz
でも大丈夫!
5月の下旬には地元航空祭があるから、たっぷり飛行機見て来ます!!(なにそれ。)
ブルーがやっと来てくれるんですよ。
本当に何年ぶりだろ…。(´Д⊂グスン

投稿: 理沙 | 2013年5月13日 (月) 08時20分

初コメントします

新作読ませて頂きましたぁ。
一条夫妻の仲睦しいところがほのぼのといいですね(*^-^)

でも、3時間でこれを書いてしまうとは・・・

次回作も楽しみにしてます。

投稿: ichika | 2013年5月14日 (火) 00時38分

sunichikaさま。
こんにちは!
以前メールフォームに入れて下さっていた…かしら?
ようこそ、「メガロードの翼」へ!
ご感想をありがとうございました!
( ^ω^ )人
イメージ出来れば骨組は早いのですが、いつも直す部分に時間かかります。
流石に3時間では、直したい言い回しや語尾の表現とかでてきてしまいますな~。(笑)
まだまだ精進です。
ヾ(´ε`*)ゝ エヘヘheart01
現在は若い未来達を中心に続きを書いておりますが、輝と未沙はと申しますと、ここでは既に40代となっております。
偉くなっちゃったものですが(笑)、成人した未来とリカルドを見守る両親や親族となった仲間達も見る事が出来ます。
ブログをもう1つ作って繋げ、別ブログにて公開予定なので、もう暫くお待ち下さいね~。
あ、こちらでは初代関係の記事と、この年齢位の番外編やエロ(笑)は続けて行く予定です。
m(_ _)mshine

投稿: 理沙 | 2013年5月14日 (火) 08時44分

お久し振りにコメント致します。

楽しくも濃いオフ会お疲れさまでした。
そのパワーだけでこんなラブリー&ラブラブなお話が出来てしまうとは、恐るべし南アタリア一同さま。

また次のお話楽しみにしてます~。

投稿: ぱよぷー | 2013年5月16日 (木) 13時19分

sunぱよぷーさま。
ようこそ、いらっしゃいませ!
久々の番外編だったのですが、こんな駄作を読みに来て下さって、ありがとうございます。
m(_ _)mshine
作品と言うのは、こちらに来て下さるコメントなどもそうなんですが、皆さんの言葉や、楽しんで下さる気持ちが作る事もございます。
作品作りにも波があるものなので、こういう時に同じ楽しみを持つ方々と遊べると、本当にいい刺激になって助かるものなんですよね。
またいらしてくださいね~!
ヽ(´▽`)/heart01

投稿: 理沙 | 2013年5月17日 (金) 13時17分

遅コメで申し訳ないですw
えー、これ打ち上げのあとで書き始めたんですか、スゴッ☆
実際、最近カーネーションもいろんな色が出てますね。
かわいいお話をありがとうございました!

それと、そのせつはお疲れ様でしたー。
またゆっくりお話できる日を楽しみにしています。

投稿: みんと | 2013年6月 2日 (日) 22時10分

sunみんとさま。
いらっしゃいませ~!
いえいえ、遅レスどころか、私の方も現在遅更新なので、全く構いませんよ!
(むしろ忘れずにいて下さって、感謝感激w)
(´Д⊂グスン
>打ち上げの後で
そうなんですよ。
実はマイパソを荷物の中に持っておりまして、現在書き進めているのを少しでもやろうと思っていたのです。
ところが、打ち上げの日に「母の日」が次の日である事を知らされ、どうせ温泉に入れないしやってみるかと思って、1時間ほどで作品の3分の2程制作してしまったのです。
マクオタ光線をこの日1日沢山浴びたせいか(笑)、想像出来たら意外と早かったので、残りはアップする前に何とかしてしまいました。
久々ヒカミサいちゃいちゃ神が降りて来て、本当に助かりましたよ。(笑)
みなさん、熱いマクオタ光線をさんくす~♪(o ̄∇ ̄)/
みんとさんもさんくすです~heart04

投稿: 理沙 | 2013年6月 3日 (月) 07時48分

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