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2014年3月 3日 (月)

君の生まれた日に

君の生まれた日に

by 理沙

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本日は早瀬未沙さんのお誕生日で――す。

ホント―に短いですが、ある誕生日の朝の2人をどうぞ~。(笑)

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彼はふと、鼻を擽る甘い香りに気付いて目を覚ましている。

『…もう朝か。』

昨夜は未沙より自分の方が帰宅は遅く、未沙が起きている内に言葉を交わす事はなかった。

毎日どうしても忙しい身の上の2人には、そんな事は良くわかっていて日常茶飯事なのだが、それでもやはり言葉を交わせないのは、時折酷く寂しく感じてしまうものだ。

そんな気持ちになる時は、どちらにしろ眠りは浅いので、彼は決まってする事がある。

夜の暗闇が少しずつ明るくなってくる時間帯、その仄かな外からの灯りで、静かに隣で眠る愛しき人の寝顔を見つめるのだ。

黙って寝顔を見ているなんて、暗い男と言われるかも知れないが、彼女の事だけを眺めてそっと語りかける時間があったっていい。

それに今朝は特に、自分が先に目覚めなければならない理由があるのだから。

目覚めたら、今日程君が忙しい日はないよね。

寝室を出たらまず、執事とメイド達が君を取り囲んで、その一言を発するだろう。

朝食もそこそこに支度をし、空には近衛軍による空砲が鳴らされ、今日1日、この王国を統べる愛すべき女王の生誕祭が始まるんだ。

まず午前中は彼女の教授の時間で、天から君を祝福しに来る大天使達を大聖堂に迎え、人間の王として人々を導く教えと言葉を頂く。

その後は軽く昼食後、家族と城正面のテラスへと出て、門の外にお祝いの記帳に来ている、沢山の全国民に対して手を振り、挨拶をするのだ。

その後大広間のパーティー会場へと向かって、各地方からやって来る要人招待客の出迎えをしながら社会交流、入れ替わり立ち替わりの立食やコンサート、ダンスをこなしている内に、夜があっという間に更けてしまうのだ。

君が全てを終わらせてここに戻る頃には、いつも明日になってしまう。

僕は、そんな君に1日エスコートとして寄り添うことしか出来ず、そんな大変な日の君を、流石に休ませないわけにはいかなくて――…。

だけどね、聞いてくれるかい。

君と暮らし始めてから、僕はどんなにこの日に感謝した事だろう。

父から受け継いだ飛行技術以外、何も持っていなかった僕に

君は正しく愛に生きる事を教えてくれた。

君がこの世界に生まれた時

どんなに周りに祝福されて来たのか、今なら理解出来る。

初めて「家族」と言うものを知って

少しずつだけど、僕が見ていない昔の君も知る事が出来るんだ。

君が今も尚、皆に必要とされ愛されるのは、幼き頃から沢山の愛が君を包んでいたからだし、その分君の中には、彼らが施した沢山の愛が次々と溢れ出ているからなんだよね。

それ故に、今日もそれらを皆に等しく分け与えなければならないとしても。

だからこそ寄り添う僕は、今日だけは君より先に目覚めなければならないんだ。

今日と言う日に、誰よりも先にこの気持ちを伝える為に。

やがて白々と辺りに漏れて来る朝日の中で、小鳥達が時を告げる様に騒ぎ出す。

息遣いが何かに反応して変わり、君の長い睫が静かに動いて、今日もまた「緑の宝石」が輝き出した。

そして君は、隣で静かに見つめている僕に気付いて言うんだ。

「…おはよう、輝。」

ひらひらと舞い降りる、鼻を擽る甘い香りにも気付く。

白いシーツに包まれる僕達を取り囲む様に、寝室中が白い薔薇とその花びらに埋め尽くされていたからだ。

それを暫くじっと眺めて、彼女は言った。

「今年はまた、一段と凄いわね。」

「ハハ…。薔薇の天使から、今年はどの位の花束にしますかと聞かれて、僕が今幸せな分くださいって冗談言っておいたら、今朝はこんなになっていたよ。」

白薔薇の花びらは、不思議な事に時空を飛んで来ているのか、何と今もこの部屋の空間の何処からか現われては、雪の様に寝室に降り続けているのだ。

これ程豪華で美しい目覚めを、2人は今まで経験した事が無い。

「ウフフ…可笑しい、クスクス…。貴男、寝室を真っ白に埋め尽くすほど幸せなの?」

「勿論。君が今ここにいる事が、僕の最高の幸せなんだから。」

「――…。」

明るく照れ臭く笑いながら、そっと僕の首に手を回して唇を交わす君に、君の愛がまた内から湧き出ているのがわかる。

そう。

僕は今日1番の「囁き」で、その愛を彼女の全身に満たすんだ。

「生まれて来てくれて有難う、未沙。」

おわり。

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